キリスト新聞、2005年6月11日付け「社説」

難民制度の改善を


■収容所内の非人間的処遇

 2003年から、牛久収容所に通い、収容されている人たちへの面接支援をしているカトリックの助祭、齋藤紳二さんの話を聞く機会があった。超過滞在(オーバーステイ)で収容されている人は、帰国のための資金がないか、帰国すると危害が及ぶ人たちであるという。
 しきりもない10畳の部屋に10人が収容されている。彼らにはプライバシーというものがない。1日30分、運動はできるが、運動場は高いコンクリートに囲まれ、日当たりも風通しも悪い。刑務所では作業があるが、ここでは作業も与えられず、食事以外にするべきことがない。4時半の食事のあとは、各部屋の扉がしまり、外には出られない。
 その結果、収容されて3カ月もすると、ほとんどの人が不眠、胃痛、情緒不安定などを訴えるようになる。
 強制送還は、難民申請など法的な手続きがなされている途中でも行われ、齋藤さんの知っているケースでは「難民不認定なら裁判をするので帰さないでほしい」と申し入れをしていたにもかかわらず、家族にも弁護士にも連絡が無いまま強制送還させられたという。
 たとえ仮放免となっても、仮放免の期間中は就労が禁止されているため、生活の問題が出てくる。月に1度の延長の申請、移動の制限など、不自由も多い。

■制度としての精神ケアを

 法務省は4月6日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民認定された外国人(マンデート難民)について、今後は強制収容せず、合理的な認定理由があれば在留特別許可を与える方針を固めた。これは、一つの前進である。
 日本は難民条約を批准し、難民認定制度を持つ数少ないアジアの国の一つである。難民条約には、難民の権利や義務についての規定があり、第31条では「庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」、また33条では「難民は彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない」と記されている。アルセンヌさんは難民申請をしたが認定は否認、異議申し立ても却下されている。帰国しても命の危険があるとの証拠はない、との理由だ。
 難民条約で難民とは政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々を指すようになっている。
 命の危険を覚え、庇護を求めて駆け込んできた人を、「不法入国者」は危険、見つけたら直ちに送還という国の方策はいかがなものであろうか。日本の難民政策、外国人対策を根底から変えていかねばならないのではなかろうか。
 いつまで収容されるのか先が見えない状況の中で心身の健康を崩す人も多く、医療や精神ケア、特に心にトラウマを負った庇護希望者に対する精神ケアが求められているが、この分野は個人の善意に頼らざるを得ず、制度としての整備がなされていない。
 ナタリー・カーセンティUNHCR主席法務官は、アムネスティーのインタビューで、日本には専門家による法律相談を受けられる仕組みがないため、専門の法的カウンセリングを提供することが必要であると語っている。長期的な視野に立ち、戦略的な政策提言を行っていくことの大切さを思う。