ブラジルの熱い風(1)

 ベロ・オリゾンテ。「美しい地平線」という意味のこの町は、17世紀以降、豊かな鉱物資源により、ブラジルの一時代を築いてきたミナス・ジェライス州の州都である。私は東北部のメソジスト教会を視察する旅の道すがら、この町に立ち寄った。町はずれの貧しい地区サンガブリエルにある、メソジスト・コミュニティーセンターを訪ねるためである。

 「メソジスト・コミュニティーセンターは、包括的な福音に責任をもとうとする人々によって1983年に始められた。その活動は、正義と、社会・政治的意識と、霊的な共同体を促進することによって、よりよい生活と社会のために苦闘する提案をもっている。」

 コミュニティーセンターの活動は多岐にわたる。無料の保育所、幼稚園の他、7〜14歳の子供のためにも共同生活の場を提供する。ブラジルでは学校が午前か午後、半日だけであるため、貧しい家庭の子供たちは、残りの半日、親もおらず、行き場がない。子供たちは、ここで昼食とおやつをもらい、スポーツを楽しみ、演劇やダンスの練習もする。またほとんどの子供は、学校についていけないので、勉強の補習もここでする。もちろん教会学校もある。これらの活動は、子供たちがストリートチルドレンにならない予防にもなっていると言う。

 青少年の活動は、さらに多彩である。手に職をつけるために、裁縫やタイプライター、電気技術の教室があり、木工所や織物工房では、実際に製品を売って、生活の助けとしている。青少年たちは、そうした技術を身につけつつ、聖書研究をし、健康、性関係、社会、政治、労働などのテーマで話し合う。

 これらは、教会の仕事ではなく、行政の責任だという教会内の批判もある。確かに教会が、ほんの一部のスラム街でこうした活動をしたところで、ブラジルの貧困は解決しないであろう。しかし行政の手の届かないところで、まず教会が活動を始め、行政をつき動かしながら巻き込んで行く過程は大きな証しであり、悲観主義への挑戦でもある。明るく、生き生きとした子供たちの姿は、神の国のひな型であると思った。

(松本敏之)

(「キリスト新聞」連載、1996年10月)

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