ブラジルの熱い風(5)

キリスト教基礎共同体

 7月15〜19日、ブラジルの熱帯海岸都市サンルイスにおいて、カトリックのキリスト教基礎共同体(CEB)の第9回全国大会が開かれた。キリスト教基礎共同体は、いわば解放の神学を育んだ母体であり、今日まで解放の神学と共に歩んできた。カトリックのブラジル全国司教会議によれば、今日ブラジルには約7万の共同体が存在し、合計約250万人のメンバーがいるという。

 第1回大会が1975年に70人で始まって以来、毎回人数は増え続けて、今回は2798人の大大会となった。ブラジルの全司教区255のうち、240の司教区が代表を送っているので(94%)、かなり広範囲の支持を得ていることが分かる。プロテスタント教会からも、私を含めて66人が参加した。

 歴代の大会を貫くシンボルは、蒸気機関車。貧しい民衆の中から生まれ、一貫して民衆の立場に立ち続けてきたキリスト教基礎共同体らしい庶民的シンボルである。「キリスト教基礎共同体」号は、毎回ひとつずつ車両を増やしつつブラジル中を駆け回り、今回9つ目の車両をつないで、サンルイス「駅」に到着した。

 二日目以降は、「黒人の宗教」「締め出された人々(土地なし農民)」「先住民」「カトリックの民間信仰」「大衆文化」「ペンテコスタリズム」のテーマ別ブロックで話し合った。いずれもキリスト教基礎共同体がブラジルのマイノリティーや、貧しい庶民の問題に積極的に関わっていることを示すものである。今回の大会の一つの特徴は、最近急成長しているペンテコステ派教会の問題を初めて正面から取り上げたことであろう。対立を煽るのではなく、お互いに貧しい地区に広がる教会として、いかに対話を始め、共に歩んでいくかという姿勢で、真剣に話し合われたことが印象的であった。

 機関車「キリスト教基礎共同体」号は、2000年にバイーア州のイリェウスで開かれる第10回記念大会に向けて元気よく出発した。

(『キリスト新聞』連載、1997年10月)

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