リオデジャネイロの世界メソジスト大会に参加して

 世界メソジスト協議会(500人の議員からなる世界中のメソジスト関係教会の協議会)は、このたび8月7日から15日まで、ブラジルのリオデジャネイロにおいて第17回世界メソジスト大会を召集、開催した。1881年にロンドンで始まったこの大会は、戦後は5年に一度開かれているが、今回はラテンアメリカにおける初の大会であり、ラテンアメリカらしいダイナミックな演出と、ラテンアメリカの現状を訴える講演や催しが印象的であった。
 「聖霊、命の与え主」という主題のもとに、世界101カ国、71教会から2700人以上のメソジストたちが集まった(大会中発行されたニューズレターによる)。遠く日本からは、勝山健一郎、北村宗次、高田彰、竹前昇、西垣二一、深町正信、船本弘毅、真壁勝一各氏(以上、日本基督教団教師)他、計19名が参加され、国際基督教大学の古屋安雄氏はキリスト教学校教育のセミナー講師として奉仕された。宮本純子(すみこ)氏と私とは、大会に現地参加し、また私は、同時開催された世界メソジスト協議会にも、日本基督教団からの議員として出席した。


(ブラジル・メソジスト教会が大会のために作った旗)

 7日の開会式では各教会の代表が手作りの旗を掲げて入場し、その間壇上ではリオデジャネイロの路上の子供たちが、大胆に歌い、かつ踊った。基調演説で大会議長のドナルド・イングリッシュ氏は、主題を取り上げつつ、次のように力強く語った。

 「今日のメソジストは、ペンテコステにおいて聖霊を経験した初代のクリスチャンから多くのことを学ばなければならない。メソジストは『心温まる宗教』にかかわっている。主の御心を行うことこそが、私たちの礼拝、成長、証しにとって決定的である。それは神を神としてふさわしく礼拝し、世界中に福音を告げ知らせ、私たちのまわりの最も貧しい人々、最も助けを必要としている人々の世話をし、より正義に満ちた社会に向かって苦闘することである。そのような事柄を無視するとき、私たちは安易に自分たちの幻を低くしてしまう。ペンテコステの日のクリスチャンたちのように、今日のメソジストたちも共に祈るべきである。初代のクリスチャンたちにとっては、祈りこそ真の仕事であった。彼らは私たちと文化も生活状況も違うけれども、彼らを私たちと同じく、弱くもろい普通の人々であった。私たちはもちろん今、最初のペンテコステの前夜にいるのではない。しかし聖霊が私たちすべての者に力をもって注がれるとき、私たちは新しいペンテコステの前夜にいると言えないはずはない。神の恵みによってその準備ができるように祈りたい。」

 また午後には、メソジスト協議会の総幹事であるショー・ヘイル氏が、地球をおおう世界各地の戦争に言及しつつ、「次の世代へ受け継がれるべき愛とゆるしの財産を生み出そう。戦争という古い財産を、平和という新しい財産に取り替え、戦争の毒に対する『解毒剤』となろう」と呼びかけた。


(開会式の様子。リオのストリートチルドレンたちが世界中のお客さんをダンスで迎える。)

 8日、9日は11のセミナーにわかれ、それぞれの関心に従って、より深い学び、専門的な話し合いをもった。私は神学教育のセミナーに参加したが、一日目はこれまで世界各地におけるメソジストの神学教育とその国の文化の関係がどうであったかを振り返った。講演者のケネス・クラックネル氏は「花瓶の中の福音」という表現を用いて、「土着化しない福音」の問題について、ユーモラスに、しかし深く切り込んだ。二日目はプロテスタントで最も有力な解放の神学者の一人であるアルゼンチンのL.M.ボニーノ氏が、ラテンアメリカの具体的な状況と解放の教育について語った。メソジストは伝統的にこの世の、特に最も助けを必要とする人々の間での証しや奉仕を強調し、かつ実践してきたが、それは解放の神学とも響き合うものである。彼はまた質問に答えて、カトリックの解放の神学者たちとのエキュメニカルな交わりについても紹介した。

 大会のハイライトは、10日午後のマラカナン競技場における大集会であろう。この日のために、ブラジル中から1万5000人以上のメソジストたちが、この世界一名高いサッカー場に集まった。国内と言えども、遠くからはバスで何日もかかる。舞台の後ろには黄色と緑と青の服を着た1500人の聖歌隊がブラジルの国旗の形に整列し、圧倒的な迫力の合唱を聞かせ、舞台の前の円形のフロアでは20人ほどの5つのダンスグループが五角形の角の位置に陣取り、それぞれ違ったユニフォームを着て、音楽がなるたびにサンバで鍛えた体で、ブラジルならではのダイナミックで華麗なダンスを披露してくれた。
 「3本の棒切れと紙と慈しみで、長い長い糸と幸せと愛で、私は色とりどりの夢の中の大空に舞う凧を作る。/凧が青空を飛ぶために風を必要とするように、教会では聖霊が必要だ。聖霊は私たちが愛し、働き、進み行くことを力づけてくれる。」子供の聖歌隊がそのように歌っている間、別の子供たちが競技場の中で実際に凧をあげて走り回った。
 この日ブラジルのストリートチルドレンのために各国から持ち寄った献金が捧げられたが、その総額は25万4000ドルにのぼった。圧倒的な大音量と熱気に耐え切れず、何人かの日本の方々は早々と退散されたが、私は「ブラジルのカーナヴァルはまだまだこんなものじゃないですよ」と笑ってコメントした。

(世界メソジスト協議会議長団)

 7日夜と、13日丸一日かけた協議会では、予算決算や委員会の活動報告などを了承した他、これまで委員会によって議論を重ね、練り上げられたメソジストの信仰、礼拝、証し、奉仕、生活についての文書とメソジスト教会間の関係、他の教派との対話、諸宗教とのかかわりについての文書を分かち合い、今日のメソジスト教会の基本線を確認しあった。またエキュメニカル委員会では、これまで聖公会、ローマ・カトリック教会、ギリシャ・オーソドックス教会と対話を重ねてきたが、その結果を共著の形で3冊のブックレットで発行した。これらについて関心のある方は、更新伝道会の真壁勝一氏(島村教会)に問い合わされたい。また初の女性かつ信徒の議長団代表としてフランセス・オールグアイア氏が選出され、ドナルド・イングリッシュ氏は名誉会長に退いた。なお協議会議場で、各国の代表がこの5年間に自分の国で起きた教会内外の出来事について報告し、分かち合ったが、日本からは神戸栄光教会の北村宗次氏に阪神淡路大震災とその後の状況について語っていただき、多くの方々の関心と共感を得たことを加えておきたい。
 最終日、私たちは別れを惜しみつつ、5年後どこかの国で再会することを期待し、それぞれの旗を持って帰途についた。

(松本敏之)


【管理人(※)による追記】今回の協議会で正式に南インド教会(CHURCH OF SOUTH INDIA)とパラグアイ・メソジスト教会の2教会の正式加盟が承認されました。これによって協議会のメンバーチャーチは73になったそうです。
(※ここでの「管理人」とは製作元:「よい羊飼いのページ」の管理人の方を指します)

(「キリスト新聞」1996年9月21日付にも、一部割愛されて掲載されています。)
☆関連する記事へ−第17回世界メソジスト大会および協議会報告

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